フォールで誘って巻きで喰わせる!
鯛ラバの新しいカタチ「フォールタイラバ」Vol.1
今回のお題は「フォールタイラバ」。
耳慣れないこのワードこそ、シマノが提案する新しい鯛ラバのカタチである。
それはいったいどんなものなのか? ということを、つぶさに紐解いていこう。
今回のテーマである「フォールタイラバ」を平たく言えば、鯛ラバゲームにおいて、もっとフォールを意識しようよということ。
従来、鯛ラバゲームで巻きが重要なのは周知の事実であり、なかでも等速巻きと呼ばれる一定速度のリトリーブこそ、この釣りの成果を左右する重大なテクニックと言われてきた。難しいテクニックを必要とせず、時として初心者がベテランの釣果を上回ることもある鯛ラバゲームだが、それでも長い目で見てベテランの優位が動かない理由は、その日その時真鯛が反応する巻き速度を探り当て、かつ一定速度のリトリーブをキープできるかという点にあったのだ。
ブレないティップ、スパイラルガイド、滑らかなギア、たわみのない高剛性のリールなどにこだわって開発するのも、すべては淀みない一定速度の巻きを実現するため。近年は、リトリーブの速度やリズムが数値や音で確認できるリールもラインナップしている。しかし…。
リトリーブにはそこまで注力しておきながら、フォールという動作がおろそかになりがちだったことも否定はできない。フォールの重要性は分かっていても、これまでは巻きに比べてシビアな指標も、それに特化した機能も存在しなかったのだ。
しかし、真鯛という魚が実はフォール中の鯛ラバに強く反応していることは、この釣りを長くやっているエキスパートには周知の事実。その証拠にベテランアングラーは、等速巻きに次いで重要な鯛ラバゲームの必須テクニックとして、異口同音に「タッチ&ゴー」を強調する。
タッチ&ゴー、つまり着底からの巻き始めは、フォール中の鯛ラバを追ってきた真鯛をバイトさせる唯一最大の瞬間。ボトムをしっかり感知し、すぐに巻きに移ることは、根掛かりを防ぐ意味だけではない。いやそれどころか、私たちが「着底した」と認識する糸フケの瞬間は、実は真鯛がフォール中の鯛ラバをくわえたサインかもしれないのである。
そんなわけで、フォール中の鯛ラバをしっかり真鯛に見せ、落ちていく途中で捕食のスイッチを入れてしまおうというのがフォールタイラバのコンセプト。巻き同様にフォールにも注力し、誘いの密度をいっそう濃くしようという試みだ。
余談ではあるが、一説によると真鯛の視軸は体の中心線に対して真横~下60度に向いており、上から落ちてくるものを待ち受けるというより、目線の高さから落ちていくものを追いかけることのほうが多いという。フォールアクションを見せる際のヒントになるだろう。
さて、ここまで読んで『それなら着底の瞬間だけ気を付けていればいい』、と思うかもしれないが、実はそれだけでは十分でない。なぜならエキスパートの面々は鯛ラバを漫然と沈めるだけでなく、その速度をコントロールして時々のヒットパターンを探しているからだ。つまりフォールタイラバでは、巻きスピードと同じくフォールスピードをその日の活性に合わせることが重要なキモとなるのである。
多くのエキスパートはそれを感覚的に調整してきたが、その作業は経験と勘に頼ったファジーな操作。
「今日のこの潮ならこんな感じで沈むだろう」ということを分かったうえで、ヘッドの形状や重さを変えたり、サミングをしたりすることによって対処してきたのだ。
しかしアングラー個々の感覚による微妙な調整だから明確な基準はなく、仮によくアタる速度が分かったとしても再現性に乏しく、ましてや巻きのリズムもリールのギア比も異なる他のアングラーと、正確な情報を共有することなど到底無理。速め、遅めなど、曖昧なイメージのみを頼りに釣りが進んでいたのである。
このように曖昧だった鯛ラバのフォールを、正確かつ一定に行なうために作り上げた概念が「フォールタイラバ」というわけ。タックルとシステムの開発に携わってきた赤澤康弘さんは、その意図と有効性を次のように語る。
「私はいままで、鯛ラバにおいてフォールが誘い、巻きが喰わせだと、ずっと思ってやってきました。でも経験を積むにつれて、同じフォールスピードでも反応する真鯛としない真鯛がいることがわかるようになりました。当然、反応しない真鯛はヒットにも結び付かない。つまり今までは、落ちていくスピードについていける真鯛だけを相手にしていたということなんです。
でもそんな時にフォールスピードを調整できたら、プレッシャーや低活性などの理由でスッと落ちるものには反応しない真鯛も誘うことができる、そう考えたのがきっかけでした。今回そのシステムが確立されて、いよいよフォールの誘いを楽しむ時代が始まったのかな、と感じています」。
でも素朴な疑問として、鯛ラバは速く落としたほうが釣れるのでは? と質問すると、「確かに速く落としたほうが、反応がいい場合もあります。でも一日を通してみれば、真鯛が速いフォールに反応する時間帯もあれば、そうでない時間帯もある。その場、その場の真鯛のコンディションにこちらが合わせていくことで、もっと幅広く釣って行けることも事実なんです。それがフォールタイラバの戦略であり、釣り人からすればひとつ武器が増えたと、私は思っています」。
ちなみにフォールタイラバが効果を発揮するのは、中層でイワシを捕食しているときのように、真鯛が浮いている状況。ドテラとバーチカルを比較するなら、バーチカルで使うほうがいっそう効果的と言えそうだ。